(3/3)「先生相談があります。乱打をさせて下さい」清明学園中・高橋監督【インタビュー】
<清明学園中学ソフトテニス部 高橋監督>
Photo By Fukuji-nyo
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[ 高橋 茂 監督 プロフィール ]
清明学園中学校 ソフトテニス部顧問
全日本アンダー17男子コーチ
[ 清明学園中学 近年の戦績 ]
(平成26年度) 全国中学校大会 男子個人戦優勝、男子団体戦出場
関東中学校大会 男子個人戦優勝・ベスト16、男子団体戦優勝
第2回国際ジュニア大会 男子シングルス優勝
過去5年間では全国出場3回、都道府県対抗10年連続出場、東京都大会・個人の優勝は10回以上
--昨年、高橋先生が学校の行事で大事な大会に行けない時があったそうなですけど、生徒さんは結果をきちんと残した(優勝)と聞きました。生徒さんへの意識付けで工夫されていることはありますか。
高橋:
2、3年くらい前までは、自分が先頭に立ってやるスタイルだったんですよ。自分が丸坊主にして、「よしお前らも、丸坊主。」って(笑)。生徒も丸坊主にしてきて、よし行くぞ!ってやってたんです。
--え、ちょっと信じられないです(笑)。
--え、ちょっと信じられないです(笑)。
高橋:本当です。でも、去年活躍した子たちがそういうタイプじゃなかった。中1の後半くらいからあんまりついてこなかったんですね。
彼らが中2の春先くらいに、うちの学校、練習で乱打をせず、ひたすら手投げでバンバンボールを打たせてたんですけど、「先生、乱打をしたい。」っていうのをある子が言いに来たんです。
その時に彼からしたら、自分に言うのに対して非常にビクビクして職員室にやってきて「先生、実は相談があります。乱打をさせてほしい。」
もちろん、自分の中では生徒と共に一緒にやってる感覚でしたので、衝撃でした。同じ目標に向かって逆算して練習してるのに、「先生、これを僕らはやりたい」と顧問に言うのにビクビクしていた。これはマズいなと思いました。そこからかなり考え方を変えて、結構自主性を大きく重んじるようになりましたね。
その時に彼からしたら、自分に言うのに対して非常にビクビクして職員室にやってきて「先生、実は相談があります。乱打をさせてほしい。」
もちろん、自分の中では生徒と共に一緒にやってる感覚でしたので、衝撃でした。同じ目標に向かって逆算して練習してるのに、「先生、これを僕らはやりたい」と顧問に言うのにビクビクしていた。これはマズいなと思いました。そこからかなり考え方を変えて、結構自主性を大きく重んじるようになりましたね。
――それ、ものすごく興味深いお話ですね。そんな時代があったんですか。
高橋:サッカーで有名な指導者の畑先生(広島県立 安芸南高校サッカー部監督)のDVDをたまたま見まして、トップダウンではなく、ボトムアップだ、という内容が本当に目からうろこで、「これだ」と。そのチームがすごいんですよ、畑先生の学校は高校サッカーで全国優勝するんですけれども、先生は生徒に、練習メニューもレギュラー決めも全部やらせるんですよ。
――全部生徒にやらせて全国優勝ですか。
高橋:自分もそれに近い形にシフトチェンジしていきました。今まではガンガン自分が前に出てたんですけれども、逆に生徒が考えるようになり、ノートの量が増えたんですよ。
自分が任せるということは、任せるだけに顧問は陰で時間をたくさん使わなきゃいけない。彼らといっぱいコミュニケーション取らないといけないし、練習はどうだろうと投げかけたりもする。逆にこれは、全然「放任」じゃないなと思いました。指導者が用意周到に準備し、彼らが行きたい所に導けるように、陰で支えることが大事だということを非常に学ばせてもらいましたね。
――全部生徒にやらせて全国優勝ですか。
高橋:自分もそれに近い形にシフトチェンジしていきました。今まではガンガン自分が前に出てたんですけれども、逆に生徒が考えるようになり、ノートの量が増えたんですよ。
自分が任せるということは、任せるだけに顧問は陰で時間をたくさん使わなきゃいけない。彼らといっぱいコミュニケーション取らないといけないし、練習はどうだろうと投げかけたりもする。逆にこれは、全然「放任」じゃないなと思いました。指導者が用意周到に準備し、彼らが行きたい所に導けるように、陰で支えることが大事だということを非常に学ばせてもらいましたね。
本当に生徒がノートを書く量はすごく増えたので、今、自分、学校に毎朝6時に来てるんですよ。6時に来て学校の仕事、自分の仕事はなるべく早く終わらせて、生徒は朝練終わった後にどんどん持ってくるんで、授業の空き時間にノートを何とかして書くっていう作業をしてます。逆にこれ、大変だなと思って。(笑)
--現場は生徒さんが自分でやるけれども、先生の"裏側"の仕掛けが大事ということでしょうか。
高橋:
そうですね。すごく嬉しかったのは、東京都大会。すごくプレッシャーがある中でどうにかまた勝てたん時の話です。代が変わって、今年のチームは多少(実力が)落ちる、ということがわかっていた。その状況で、生徒たちが私抜きで自主的にミーティングやっていた。
そのミーティングの内容を聞くと、「清明学園中学は、東京は優勝するだけじゃダメだと。試合のマナーもそうだし、オフコート、コートじゃない所でも東京一番でなきゃダメだから、そこを注意するぞ」という話をしてたらしくて。違う顧問から聞いたんですけれども、ものすごく感動しましたね。
そのミーティングの内容を聞くと、「清明学園中学は、東京は優勝するだけじゃダメだと。試合のマナーもそうだし、オフコート、コートじゃない所でも東京一番でなきゃダメだから、そこを注意するぞ」という話をしてたらしくて。違う顧問から聞いたんですけれども、ものすごく感動しましたね。
サッカーの畑先生もおっしゃってるんですけれども、「生徒がこういうことはできないだろう」「練習メニューも作れないだろう」というのは大人の勝手な固定観念なんです。中学生でも高校生でも、すごく可能性を持ってるんだなってことが、この1年間、本当にたくさん学びました。
--それ、本当に面白いお話しですね。先生、ターニングポイント多いですね。5年前の先ほどのお話もありましたし、2、3年前のお気づきになられた部分とか、本当柔軟に色々と変えられている。
高橋:
勝つ目的は同じなので。自分の所有物でもないですし、今までは、そもそも4、5年前までの、今の高3の子なんかは、自分が全部対戦相手のデータをまとめて、良い所はここ、悪い所はここ、だからこうしろああしろと、それこそ全部指示してたんですよ。
それで彼らは、「先生のおかげで勝てました、ありがとうございました。」って卒業していくんですけれど、でも今思えば、彼らが一番この時期で学んでおくべき、自主性や自分で考え得る力を奪ってたんだと思います。そういう意味では、3年前、4年前の子たちには申し訳ないことをしたなと思ってます。
それで彼らは、「先生のおかげで勝てました、ありがとうございました。」って卒業していくんですけれど、でも今思えば、彼らが一番この時期で学んでおくべき、自主性や自分で考え得る力を奪ってたんだと思います。そういう意味では、3年前、4年前の子たちには申し訳ないことをしたなと思ってます。
--先生がソフトテニスの指導者になろうと思われたきっかけは何ですか?
高橋:
自分は、教員になろうと思ってたんですね。ソフトテニスを指導するっていうのは、正直これっぽっちも思ってなかったんですよ。本当ラッキーなことに、東京都新宿区にある海城学園という、自分がいた時には慶応大学に現役で一番入っていた進学校です。そこの中学生のソフトテニス部を3年間、非常勤講師でやらせてもらったんですね。
本当に進学校なので、茨城、栃木、関東一円からみんな来てる、本当に小学校の時勉強しかしてなかった子どもたち。彼らが4月にラケット握って、何とか勝ちたいと思って、グングン吸収していくのが分かるんですよ。で、「ああ、テニスの指導面白いな。」と思って。週に3回しかコートは使えなかったので、近くの公園をずっと走ってたり、素振りも散々しました。
最後、辞める時に、都で団体ベスト8に入ることができたんですが、そこから指導者としてたくさん勉強していこうと思いました。その後清明学園に来れて、一からチームを作りました。頑張って関東出るぞ、全国出る、日本一になるぞ、という目標を掲げてやってきました。
本当に進学校なので、茨城、栃木、関東一円からみんな来てる、本当に小学校の時勉強しかしてなかった子どもたち。彼らが4月にラケット握って、何とか勝ちたいと思って、グングン吸収していくのが分かるんですよ。で、「ああ、テニスの指導面白いな。」と思って。週に3回しかコートは使えなかったので、近くの公園をずっと走ってたり、素振りも散々しました。
最後、辞める時に、都で団体ベスト8に入ることができたんですが、そこから指導者としてたくさん勉強していこうと思いました。その後清明学園に来れて、一からチームを作りました。頑張って関東出るぞ、全国出る、日本一になるぞ、という目標を掲げてやってきました。
--本当に、海城学園さんでの出会いが良かった。
高橋:
そうですね、出会った子が良かったですね。今ではすごく立派になりました。最近も会ったんですけれども、「先生から教えてもらった3年間で、社会に出てるためのスキルを教わりました。」って言ってくれて、すごい本当に嬉しいですね。
---そんなことを聞いちゃったら、泣けちゃいますね。最後に、ソフトテニスの指導者としての目標を教えてください。
高橋:
指導者として、ずっと常々自分はソフトテニスで色々学ばせてもい、成長させてもらったので、常に何らかの形で恩返ししたいなと思ってます。自分のチーム練習が無いときには小学生の指導をさせてもらったり、東京国体で高校生の指導をさせてもらったり、東京都全体で強くなっていきましょうという形で、今まで関わらさせてもらってきていますし、しっかり続けたいなと思っています。
また、おかげさまで、今、全日本のアンダーの指導もやらせてもらえているので、日韓中で勝つっていうことは当然なんですけれども、それ以上にアジア大会でしっかり金メダルを取れる、アスリートとして人間力溢れる、素晴らしいソフトテニスのプレイヤーを育成していきたいなと思っています。
――先生のご活躍にこれからも期待しています。ありがとうございました。
(聞き手)ソフトテニス・オンライン編集長
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「ソフトテニス・オンライン」
このインタビューは2015年3月に行われたものです