ソフトテニスのポータルサイト「ソフトテニス・オンライン」
ソフトテニスを楽しくするBlog

「耳順」 ~韓国遠征から

 58a6aa64-s

「部活運営のヒント」メルマガの読者のみなさま

読んでくれてカムサハムニダ~。

NTT西日本広島の堀です。

前回の記事を読みなおし、反省をしている所です。少し補足が必要かと思います。
 
前回記事で「勝ち負けを気にするな。自分のプレーをしよう」と選手が思うのは『逃げ』である。と書きましたが、それはプロである韓国代表としのぎを削らなければならなかったり、日本一が常に使命であるNTTの選手たちにあてはめた話です。


小・中・高生や、ソフトテニスを始めたばかりの子どもたち、生涯スポーツとして楽しむプレーヤーには当然、勝ち負けを気にせずに心から楽しんでプレーしてもらいたいですし、自分のやりたいプレーをどんどんやってほしいと思います。
ですから、『部活運営のヒント』という点からは少しズレてしまった部分もあるかと思います。お詫び申し上げます。

さて今回も引き続き、韓国遠征で得たもの・感じたものをご紹介していきます。

●勝利に対する凄まじいまでの『どん欲』さ

選手が強い気持ちを持って大会を戦ってくれたおかげで、団体戦は決勝を含め3番勝負を3度制し、金メダル。
個人ダブルスは丸中・長江ペアが終始、攻撃的にプレーし金メダルを獲得してくれました。
 
選手が「勝っても負けてもいいや」という気持ちがあったのなら、この好成績はなかったと思います。

しかしながら、個人ダブルスの他のペアは早々に負けていますし、何といっても最終日の個人シングルスでは全日本2位の長江、3位の船水ら国内トップの実力である4名の選手がエントリーしたにも関わらず、4名とも初戦敗退という厳しい結果に終わりました。これは重く受け止めなくてはいけません。

この現実を選手たちが生で見ることが出来たのは大きな財産となったと思います。

韓国は一昨年のアジア大会は全7種別で金メダル、昨年の世界選手権では6種別で金メダル、団体戦のみ日本が一矢報いたのですが、近年は圧勝と言っていいほど国際大会をリードしています。

韓国が強くなったのか?日本が弱くなったのか?ここで議論するつもりはありませんが、この韓国遠征中に驚かされたのは、日本選手が試合をしている間、どのチームの韓国選手もぞろぞろやってきて、じーっとNTTの選手の試合を見るのです。

中には身振り手振りで、NTT選手の手首の使い方など真似をし、話し合っている選手もいました。
私は、他国のトップ選手から何か技術を盗んでやろう、NTTはどんな攻め方をするんだ?弱点は何なのか?と研究しているように見えました。

韓国の選手は何度も言うように生活がかかっています。そして国際大会で金メダルをとれば、ボーナスや年金、徴兵にまで響いてくるのです。ライバル国である日本から何か得ようとする姿勢、試合で当たった時に勝つための情報収集をする姿には感服しました。

かたや日本はというと、NTTだけでなく全体に言えることだと思うのですが、良い言い方をすれば自分たちの試合がないときは思い思いに自分の時間を大切にする傾向があると思います。
試合の合間に音楽を聴いたり、ゲームをしたり。それが悪いとは思いませんし、オン・オフの切り替えは大切なことだと思います。
韓国の選手も当然リラックスする時間は持っていると思いますが、「勝利」のためにのどん欲さという点は韓国の選手は日本選手の上をいっていると思います。

さらに驚いたのは、予選リーグで当たった、前年度のチャンピオンチーム(NTTが②-1で勝利)と決勝トーナメント準決勝で再び対戦するとなった時です。
何と、相手チームの監督さんが「日本チームを出場させていいのか?」と準決勝になって大会本部へ抗議してきたのです。
そのために開始時間が1時間弱遅れスタート。
国際大会さながらの気迫と異様な雰囲気の中での再戦となったのですが、NTT選手は終始気持ちを切らさず、再び②-1で下しました。

あとで聞くと、優勝と3位では評価が全く違う。何としてでも結果を出さなければいけなかったらしいのです。
監督さんも抗議をして大会参加を覆せるなんて思っていなかったはず。何かしらNTTチームを動揺させようととった作戦だったような気がします。いずれにしても「勝利に対する執念・どん欲さ」を強く感じた一戦でありました。



野村克也さんの名著『勝者の資格』の中に、「耳順」という言葉が出てきます。
 
孔子論語に出てくる言葉でもありますが、「他人のいうことを耳に逆らうことなく素直に聞く」という意味です。上達には、むさぼるように聞く・身を乗り出して聞く・顔を輝かして貪欲に聞くことが必要であると説いています。ここでは勉学でなくスポーツですので、「聞く」プラス「見る」ことも重要になってくると思いますが、まさに韓国選手はむさぼるように聞き、見ることで私たちから少しでも何かを得ようとしていました。

年齢に関係なく情報を閉ざした瞬間にテニスは上達しないし、人間としての進歩も止まってしまうと思います。
私は松下幸之助さんが大好きで、自分の子どもにも「こうのすけ」と名付けてしまったくらいなのですが、松下幸之助さんは日本有数の経営者になられたあとも、様々な方々、一般社員さえの意見をも素直に聞き、良いと思ったことはすぐに取り入れていたそうです。
 
人は十人十色と言いますが、10人いれば10人の意見、考え、ポリシーは違います。10人いれば気の合わない人が2,3人はいるかも知れません。ですがその2,3人が自分には無いものを持っているかもしれません。
「あいつとは気が合わないから」「あいつは嫌いだから」と聞く前に閉ざしてしまったら、成長するチャンスが身近に転がっているのにもかかわらず、逃してしまう可能性だってあるのです。
是非みなさんも自分のポリシーやセオリーを超越するために、自分自身の幅を広げるために、新しい方法・情報をあらゆる所から取り入れていきましょう。
そのためには、耳や目から新しい情報をどん欲に取り入れていく努力が大切です。

そしてこちらも…
JASP(ジュニアアスリートサポートプログラム)
http://jasp.jp/に登録しよう


韓国選手に「最近日本には勝っているから、相手ではない」という『驕り』があったのなら、NTT選手が試合をしていようが練習をしていようが見向きもしなかったはずです。
私は正直、韓国に行く前は、日本選手の事を相手にしないのではないか?という思いも少しありました。
しかしそれは大きな間違いでした。彼らの目はとても鋭く、とてもギラギラしていました(良い人ばっかりでしたが)。
今後韓国に勝つためには、技術論や戦術論以前に、「何としてでも勝つ」というどん欲な気持ちが上回らければならない!と感じた韓国遠征でした。

200勝を達成した広島の黒田投手の「気持ちだけでは勝てない。だが、気持ちがなければ勝てない。」という言葉を思い出しながら、アシアナ航空の飛行機が落ちないことを祈りながら(笑)、清々しい青空を窓から眺め、太陽のようにギラギラあつい気持ちになりながら、帰国の途へ就きました。

さて7回目の次号は、私ではなく、長江光一選手からの寄稿となります!
是非ご期待ください!!


JASP(ジュニアアスリートサポートプログラム)
http://jasp.jp/に登録しよう


NTT西日本広島ソフトテニス部スタッフの記事を真っ先に読める!
メールマガジン「部活運営のヒント」(無料)の購読登録はこちら